隈部刃物 MAGSAYA仕様 〜包丁のできるまで〜

1921年(大正10年)創業、隈部刃物製作所は100年の歴史がある鍛冶屋です。初代・隈部直氏は、忠利の名の刀鍛冶で、打ち刃物産地で有名な土佐や関で修業し、熊本にて一般の手打刃物を手掛けるようになり、戦後宮家への献上で菊一文字の御紋を賜りました。その後、二代目・隈部助直氏から、現在の三代目・隈部寛氏、四代目・隈部智大氏へとその技術は受け継がれています。

四代目・隈部智大氏       三代目・隈部寛氏

工房内の様子

材料の切り出し:包丁の材料となる地金は、最初は細長い棒状です。手で持ち適度な長さに切断します。

火造り:地金を加熱するため、松炭を使い炉の温度を約830度から880度にまで上げていきます。

加熱:地金を炉で加熱し、柔らかくなったところで形を整え、次の鋼付けの工程へと進みます。

割り込み:鋼を地鉄に割り込み荒整形します。

鍛造準備:それぞれの素材の間に「鍛接材」(硼砂・「ほうしゃ」)と呼ばれる薬品を入れていきます。

鍛造:ハンマーで材料を打つことで、異なる金属の粒子が結合し、3枚の材料が1枚になっていきます。一つになった材料はさらに打ち鍛え、より強靱な素材へ変わっていきます。

荒叩き:鍛接した刃物の原型を再び炉の中で熱し、寸法に合わせて大きく打ち伸ばし、大まかな形と厚さを整えていきます。

焼きなまし作業:850度の状態から、わら灰で養生しゆっくり冷やすことで粒子を均一にし、柔軟性を持たせます。

皮剥がし:焼きなまし後、酸化膜を手作業で剥がしていきます。

締め打ち:手打ちで整えながら、刃の周りの金属と芯の鋼との金属成分をしっかりと一体化させます。

銘入れ:「寛助(かんすけ)」の銘と、菊一文字の紋を、刻印で入れます。

荒切り:不要な部分を手作業で切り落とします。

荒整形:グラインダーを使用して手作業で形を整えます。

整形:砥石120番を使用して手作業で形を整えます。

磨き作業:砥石1000番を使用して手作業で表面を整えます。滑りすぎないよう峰の中央部は粗目に仕上げます。峰の角の部分はやさしく丸めて美しく仕上げます。

磨き作業:グラインダーを使用して手作業で付け根部分を磨きます。

どろ付け作業:焼き入れ前に、水分を含んだ泥(主成分は砥石から出る粉)を表面に塗っていきます。

どろ付け作業:バーナーで煽り、しっかりとコーティングします。

焼き入れ:松の木から作られる小さな四角のブロック状の木炭を使用し、包丁を高温に熱した後に、適切な温度の水につけ焼き入れします。焼き入れにより、硬度と耐久性を高めます。焼き入れの温度とタイミングは、鋼材の色を見ながら職人が判断するため、作業場の照明を落とし、真っ暗な中で作業します。

焼きもどし:再度加熱し、粘りや強靭性を高めます。焼き入れ、焼きもどしにより、強くてしなやかな刃になります。

焼きもどし:煤を払いながら、ゆっくりと冷まします。

天日干し:鋼材の変形を出し切るため、日光の当たる場所に、7日間から長い場合は1カ月間置き、なじませます。

ひずみ取り:僅かな歪みや傷をなどを確認します。

荒研ぎ:研ぎ棒と呼ばれる自作の道具を使い回転砥石で研いでいきます。包丁の状態をしっかり見極めながらゆっくりと作業を進めます。

本研ぎ:荒研ぎを終えた後、実際に切れるようにする為に更に薄く研いでいきます。

バフ仕上げ:刃に光沢を持たせる為に回転バフと呼ばれる研磨布を当てていきます。初めは荒く徐々に細かくバフを変えていき最終的には光輝く美しい包丁に仕上げていきます。

ぼかし(化粧研ぎ):砥石の粉を粘土状になるまでコネたものをゴムや木片につけて刃に擦りつけていきます。
波紋を付ける大事な作業であり、配合する粉の種類と量は美しさを引き出す為の肝になります。

仕上げ研ぎ:ぼかし作業を終えた包丁を最終的に手研ぎで仕上げていきます。切れ味を決める作業で包丁一本一本の状態を見ながら最高のポテンシャルを引き出していきます。機械を使わずに職人の手作業で進めていきます。

柄付け:完成した本体に「柄」の部分を取り付けます。

最終確認:包丁全体のゆがみひずみを職人の目で確認します。

MAGSAYA峰ロック加工:フライス盤で、包丁の峰部分にMAGSAYA包丁ホルダ用の定位置ロック用の切込を刻みます。

MAGSAYA仕様:柄に挿す心棒は錆への対策のためステンレス鋼となっています。

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